視察

本日のお客様は、首都圏にある某県。
「業務マニュアルはないんですか」「契約書をいただけませんか」ということをあんまりうるさくおっしゃるので、私の牽制もむなしく、やさしい同僚が渡してしまった。まつもとは、危うくキレるところであった。
マニュアルや契約書の類は、広告事業の言わば最後の砦だ。これさえあれば、すぐにでも広告事業が始められるというシロモノだ。民間企業であれば企業秘密に値するものだから、他都市に請求されたからと言って渡す必要がない、というのが私の考え方だ。
感情的には、人が何日も何週間もかけて苦労して作ったものを、コピーでたやすく手に入れてしまおうとは、失礼だと思う。
新規の事業の導入にあたっては、「二番手の優位」という現象がおこるものだ(片岡先生のうけうり)。最初に導入するところは、生みの苦しみを味わいつつ、多少荒削りの成果を出す。一方で、二番手の自治体は、先進自治体の成果はそのままマネし、失敗したところは改善する時間的余裕もあるので、大して苦労もしないのに、先進自治体よりもいいものを作ってしまうのだ。
「二番手の優位」の現象が起こってしまうのは仕方がないが、いざ先進自治体の立場になってみると、自分が立ち上げた事業が広まるのは嬉しい反面、成果だけが広まっていき、自分たちが苦労した過程はなんだったんだろうという気分になる。もっと広い視点で見ると、我々に投じられた横浜市民の税金が、実は他都市のためにも使われていたというようなことになるわけだ。これでは納税者である横浜市民に説明がつかない。
この手のマニュアル・契約書ねだりは日々尽きない。以前、電話で「ごめんなさいね〜ケチですので差し上げていないんですぅ」とのらりくらりかわそうとしたら、「どうしてダメなんですか」と憤り、「じゃあ情報公開します!!」と言った輩がいる。「どうぞご自由に」と言って電話を切った後、メールで上記の生意気な論をぶちまけたところ、さすがに納得してもらえたようだ。
「他都市お断り」とはじめからWEBページに標榜しておこうかな。